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平成18年度企画展

家元と大衆の時代

館蔵 茶書の歴史Ⅷ　戦中戦後

2006年9月1日(金)-12月7日(木)

　館蔵品により茶書の歴史を通覧するシリーズのパートⅧ後期では、昭和期・戦中戦後の茶湯の状況を考察いたします。
　昭和10年(1935)頃からの資本家茶人・近代数寄者の後退と、知識人数寄者の啓蒙により、新たに茶湯の担い手となったのは、家元に率いられた一般大衆でした。その殆どが経済的にも時間的にも余裕のできた女性で、太平洋戦争が勃発する昭和15年に開かれた利休350年忌大茶会では、集まった多くの女性達と、空前のラジオ実況放送の様子が『餘香録』に記されています。
　戦争に入ると、元来戦国の世から生まれた茶には、却って深い関心が払われます。物資欠乏等で困難はあったものの、流派内の各地域で結束が見られ、戦後の家元を中心に据えた組織作りの素地が生まれました。
　このように、茶湯の被った戦争の影響はさほど大きくなく、戦後の伝統文化への回帰の風潮の中で引き続き隆昌し、研究にも深化が見られました。高度成長期に入ると更に急成長し、昭和31年には、『茶道古典全集』全12巻の刊行がはじまり、茶湯研究に金字塔を打ち立てました。
　本展では、現在でも手に入るロングセラーも含め、茶湯が大衆化した時期の茶書約70点を展覧致します。戦中戦後を振り返る事によって茶湯の現在を発見し、今後のあり方を模索する一助となる事を祈念致します。